ときめきくらしびと
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第8回 福田マコトさん|人生という冒険を楽しむ―パリ留学と子育てで変わったファッション哲学

くらしきぬのお客様とのおしゃべりを通じて、日々の暮らしの中で「ときめき」を見つけるコツを探る『ときめきくらしびと』。第8回は、ファッションスタイリストとして活躍する福田マコトさんにお話を伺いました。

ときめきくらしびと 第8回 福田マコトさん

多数のファッション誌でご活躍中のマコトさん。まるで気心の知れた友人とおしゃべりをしているような気になってしまう文章からは、マコトさんの人柄が伝わってくるよう。気さくで飾ることなく、ユーモアを欠かさない。その印象は取材を終えて、より一層強くなりました。いくつになっても飽きることなく、人生を楽しみ尽くす秘訣を探ります。

プロフィール

福田マコトさん|東京都在住、ファッションスタイリスト。セレクトショップのアパレル販売員を経て、フリーランスのスタイリストに。30歳のときにフランス・パリへ留学。現在は10歳の男の子を育てながら、『LEE』や『mi-mollet』など数多くのファッション媒体で活躍中。あこがれの人は、ジェーン・バーキン。

福田マコトさん instagram

衝撃を受けたフランスのファッション文化

  • ファッションスタイリストとしてご活躍中のマコトさんですが、30歳でパリに留学されたのはファッションを学び直したいという動機だったんですか?

    日本に戻ってきた時に、スタイリストでないにしてもファッションの仕事は続けたいなと思っていました。でも明確な理由があったというよりは、仕事漬けの日々にちょっと疲れていたんでしょうね。一度、立ち止まってゆっくり自分と向き合いたいなって!

  • 日本に戻られたらファッションスタイリストとは別の職業にシフトチェンジされていた可能性もあったんですね!

    そうですね。でもありがたいことに、パリに行っても仕事が途絶えませんでした。パリはファッションととても関わりの深い国。日本から来る取材班のお手伝いをすることも多く、パリジェンヌのスナップ写真にコメントを書いたりして、思いがけず編集の勉強をさせていただくことができました。

    結局、語学学校には最初の3ヶ月くらいしか行かずに、仕事したり、美味しいものを食べ歩いたり、ドイツやイタリア、モロッコなどの周辺国を旅したりしていました。自分で働いて、ある程度お金を貯めてからする大人留学、楽しいですよ!

  • 学生時代の留学とは違った楽しさがありそうです。パリに行かれて、ファッションへの考え方は変わりましたか?

    日本にいた頃とは、真逆に変わりました。20代のときはシーズンものが出るたびに新しいものが欲しくて、ひたすら買い集めていました。「新しいものがファッションだ!」って信じていたけど、パリではそういう人ってほとんどいないんですよね。日本人の女性はトレンドに敏感で、すごくお洒落だと思います。フランス人は、新しいものよりも古いものを受け継ぐことこそが素敵、という文化

    例えば、パリで若い子がブランド物のバッグを持っていたとしたら、おばあちゃんのおさがりだったり、お母さんのものを借りている場合が多いんです。理由は新しいものよりも、良いものを長く使いたいという本質的な考え方から。そこには受け継ぐという美しい文化があるんです。それってまさに今の時代にピッタリだと思いませんか?サスティナブルな考え方でもありますよね。

  • よく「フランス人は10着しか服を持たない」なんて言いますが、本当なんですね!

    パリジェンヌは・・・あざといんだと思います(笑)自分の個性をよく理解していて、どう見せたら素敵か、ちゃんとわかっているんです。黒いタートルにデニムを合わせただけのシンプルなファッションだとしても、ちょっとした工夫でキャラが立っているような人っていますよね。

  • 「あざとい」ですか・・・!

    例えば無造作なヘアー!あれって全然寝癖じゃなかったりして・・・ちゃんと無造作を演出しているんです。きっと自分が一番素敵に見えるヘアースタイルだから。そしてそのあざとさがなんともチャーミング。トレンドを追うのではなく「らしさ」を大切にできるのが素敵だなって

留学時代、よく仲間たちとピクニックしたという川べり。パリっ子はよく飲みよく喋る。ライフスタイルへの考え方も、とても影響を受けたそう。

ヒールを履かなくても、今できる一番のおしゃれを見つける

  • フランス留学が大きな転機だったということですが、出産によっても変化はありましたか?

    留学がきっかけで一度価値観がぐるっと変わりましたが、それよりも大きな変化は出産でした。子供を産む前は夜中の0時まで仕事して、それから食事に行くのが普通の生活。それでもまだまだ働きたい!と思っていました。今考えると若くてエネルギーがあり余っていたし、それだけ楽しい仕事なんですよ、スタイリストって

    でも子供が産まれてからは、保育園への送り迎えがあるし、朝はやらないといけないことがてんこもり。自然と朝早く起きる生活になって、土日もちゃんと休むようになりました。それまでの朝は、働いた後の明け方ばっかりだったから、朝ってこんなに気持ちよかったんだってびっくり!(笑)

  • 生活がガラッと変化するにあたって、戸惑いのような気持ちはありましたか?

    当時は感じていないつもりだったけど、今振り返ると必死で何かに抵抗していたんじゃないかなと思います。その頃、やたら黒い服やスタッズが付いたバッグなど強さ強調するようなファッションをしていたような・・・。

  • 反骨心がファッションに表れていたんですね!(笑)

    メイクも真っ黒のアイラインに真っ赤な口紅塗ったりね(笑)母親になったからといって、ナチュラルなファッションに染まりたくないし、周りにもそう思われたくなかった。尖っていなきゃって気張っていたんだと思います。

    でもある日、子供を自転車の後ろに乗せているときに、ヒールがペダルに挟まってヒヤッとした瞬間があって・・・。その時に、私何やっているんだろうって、つーっと涙が流れました(笑)多分、どんなお母さんも色々な場面でつーってなっているのではないでしょうか。これまでの自分と、母親になった自分とのギャップを受け入れるのは簡単ではありません。モヤモヤした気持ちのまま突っ走っていたけど、その涙以降、母親であることを隠すような仕事の仕方はやめようと決めました。だって「お母さん」って大変だけど、本当に幸せだから!そしてせっかくならスニーカーやデニムなどカジュアルでも楽しめるファッションを探したい、と思うようになりました

  • ファッションスタイリストである自分と、一児の母である自分の両方をまるごと受け入れられたんですね。

    無理するよりも、その時自分が置かれている状況や持っているもので思いっきり楽しみたいですよね。憧れのフランス人女性が何人かいますが、彼女たちの何が好きって、すごく自然体なところ。自然体でいるためにどうしたらいいんだろうって考えたら、やっぱり無理しないこと。当時、「子供がいるから、スニーカーを履かなきゃ」みたいな気持ちがなかったと言ったら嘘になるけど、今はスニーカーを素敵に見せる術に自信があるし、カジュアルなファッションを心から楽しんでいます。ある意味、子供の存在が「無理しないファッション」への気づきをくれたのかもしれません。身体に気を遣うようになったのも、子供を産んでからなので。

マコトさんお気に入りの白スニーカーたち。たまにはハイヒールで気分を上げるけれど、今はスニーカーでも十分おしゃれを楽しめる。ファッションは、その時の心の状態を映し出す鏡なのかもしれません。

10年後、着ている姿が想像できる服を買う

  • 健康のためにどんなことを気をつけていますか?

    まずははらぱんを履いて、身体を冷やさないこと。私、健康寿命を延ばしたいんです(笑)年上の素敵な先輩方とお仕事をさせていただくと、「こんな女性になりたい」という指針になります。何歳になってもおしゃれを楽しむために、髪、肌、身体のメンテナンスをどうしようかなって。今からの習慣で10年後、20年後の姿が全く変わってくると思うから、できる努力は惜しまずしたいです!ただでは老いないぞー!(笑)

  • 食事にも気を遣っていらっしゃいますか?

    今一番興味があるのは、腸活ですね。一回いらないものを全部出すと、ちゃんといいものが入ってくるという点で、腸活と断捨離ってすごく似ているなって最近発見したんです。私も今はこれからの為に今までの凝り固まった価値観とクローゼットを整理している最中でして。

  • なるほど…!腸活と断捨離が似ているだなんて思ったこともありませんでした。服って、なぜかなかなか捨てられないんですよね。

    捨てようと思ったらさ、「これ着てあのレストラン行ったな~」とか、「あの友達元気かな?」とか思い出したりしてね(笑)まぁ、無理してやらなくていいんです。あとフィットネスとファッションをかけ合わせたのもすごく好き。運動するときのファッションはすごく動きやすくて楽だから、それを日常着として着れたら服もミニマムになっていく気がするんですよね。

  • 服を選ぶときの基準のようなものはありますか?

    最近は、なんとなく10年後の自分が着てそうだなって想像できる服しか買わなくなりました。高いとか安いとかではなくて、着回しやすいのか、着心地は良いのか・・・そういうところを基準にしています。でも、毎日同じコーディネートも気分が上がらないので、アクセサリーやスカーフでアレンジしています。同じ服を新鮮な気持ちで楽しめるのでおすすめです。

何歳になっても冒険をやめない

  • ご職業柄、ときめく瞬間は多そうですが、日々どんなときにキュンとしますか?

    ファッションスタイリストという仕事はときめきの連続だと思います。展示会、リース、撮影などなど、毎日心の底からワクワクできるので本当に幸せな仕事です。なので毎日キュンとしてるかな。

    プライベートではやはり子供と過ごす時間でしょうか。
    10歳の息子は、徐々に発言も大人っぽくなってきて、子供と大人の狭間のようなお年頃。もう少しで飛び立つなっていう予感があります。息子が私の元を離れたときに、息子ロスみたいになりたくないから(笑)自立するときは潔く送り出そうって心構えはしつつ、それまであと何キュンできるか!楽しみですね。

  • 一緒にいられる今の時間は、どんな風に過ごされていますか?マコトさんの連載で、息子さんと一緒に民藝の展示会に行かれているのを拝見しました。

    美術館でもパーティーでも、よほど子供禁止なところでなければ一緒に連れて行きます。私には色々な世界を見せてあげることくらいしかできないから、なるべく一緒に冒険したいなって。見なければ見ないで知らないままだけど、出会いがあれば自然と興味や疑問が湧いてくる。たくさんのものを見て、何か感じて、いつか何かの種になればいいなと思います。民藝について話せる男性なんて、粋じゃない?(笑)

長期休暇を取れるときは、家族3人揃ってキャンピングカーの旅へ。北海道、四国、九州は一周したのだとか!

  • ご家族を持たれてからも、そんな風に軽やかな選択ができるってすごく素敵です。

    軽やかってすごくいい言葉。軽やかって、自由であること。コロナ禍を経験して、新しい考え方、価値観が必要だと思うようになりました。実は、また留学したいと思っていて。50歳くらいまでにできたらいいなぁと考えています。それこそ今までの当たり前を覆す新しい価値観を手に入れたからこそ、憧れているのかもしれませんね

  • 人生を楽しむアイデアが尽きないですね!

    変わっていくことが面白いから、なんでもとりあえず言ってみる、やってみる。無計画すぎてご迷惑をお掛けすることもあるかもしれませんが(笑)「ダメならやり直せばいい」という楽観的な気持ちが元々あるようです。いいんです、何回やり直したって。挑戦しなかった後悔に比べたらなんてことない!

  • マコトさんのような心持ちであれば、いくつになっても心も体も若々しくいられそうです。最後に、マコトさんにとっての「ときめき」を教えていただけますか?

    「憧れがあること」です。素敵なものは素敵だと、素直に誰かや何かに憧れられる気持ちを忘れないでいたいです。

マコトさんのくらしきぬ愛用品

 

シルクはらぱん

はらぱんシリーズは一年を通して愛用しています。特にシルクはらぱんは薄手で洋服にも響きにくいため、重宝しています。

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  • 取材・文:
    佐藤文子
  • 撮影:
    瀬良智也
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