天然素材の上質な糸
肌に触れる面は、いつも天然素材に。同じシルクでも糸の仕様ひとつで風合いは変わるので、季節と用途で糸を選び分け、理想に届かないときは繊維の組み合わせや撚り方から探ります。
「わたしに還る」心地よさを、
天然素材の豊かな恵みに託して。
なぜ、くらしきぬは天然素材にこだわるのか。
それは、じんわりとした温もりや凛とした涼やかさなど、自然の恵みだけが持つ素肌が深呼吸するような心地よさをお届けしたいから。その豊かな力を引き出すため、糸の選定や複数素材の組み合わせ、編み立てに至るまでじっくりと向き合って形にしています。
そんなわたしたちの製品づくりを支えてくれる熟練の職人たちとともに辿り着いた、特別な生地の数々。なぜ、くらしきぬは心地よいのか。その答えが、ここにあります。
肌に触れる面は、いつも天然素材に。同じシルクでも糸の仕様ひとつで風合いは変わるので、季節と用途で糸を選び分け、理想に届かないときは繊維の組み合わせや撚り方から探ります。
天然素材はそれぞれ得意なことが違います。麻にコットンを撚り合わせると、涼しさはそのままに肌あたりがやわらぐ。持ち味を高め合う配合を職人と検証しています。
天然繊維は収穫時期や気候で状態が変わり、朝と夕方でも違います。その微差を編み地から見抜き、機械を合わせ直せるのは長年の経験を積んだ職人だけ。狙った風合いを引き出します。
「ウールはチクチクする」と思っていた方にこそ、触っていただきたい生地です。使うのは、若い羊の胸元から刈り取る最高級メリノウール。繊維が細くやわらかいので、肌に残るのはあたたかさだけです。内側に上質なシルクを重ねた一枚は、冬の定番として長く選ばれてきました。
ウールの繊維は、髪の毛と同じように表面がうろこ状の層で覆われています。この層が粗いほど肌にひっかかり、チクチクの原因になります。くらしきぬの製品で採用している最高級メリノウールは、繊維が細く、繊維の層もなめらか。細かな縮れが空気を抱えるので、軽い上にあたたかいのです。
生地に重ねたシルクは、生糸を引いたあとの上質な繊維だけを撚り合わせた「絹紡糸(けんぼうし)」。しっとりと肌に吸いつくようになめらかで、乾燥する季節も静電気が起きにくくなります。ウールとシルクはどちらも湿気を吸って外へ逃がすので、あたたかいのに蒸れず、汗をかいても冷えません。
はらぱんウールでは二本の糸を重ねて編み分ける技法を使っており、肌にあたる内側にシルク、外側にウールがきれいに並ぶように編み立てます。熱を逃さないように編み目を小さくし、実際より大きく編んでから縮めて、生地そのものにゆとりを持たせました。ぴたりと沿うのに、締めつけません。
シルク単体は「伸びない」のをご存じですか。美しい光沢と優れた吸湿性を持ちながら、インナーとして使うには伸縮性が課題でした。ポリウレタンの芯にポリエステルを巻き付け、さらにシルクで包む三重構造。肌に触れる面はすべてシルクでありながら、優れた伸縮性を実現しました。
よく伸びるポリウレタン糸を芯に、引き伸ばした状態のままポリエステル糸を巻きつけます。密度を高く巻きつけるほど強度が増し、さらにその上からシルクの糸を巻きつけることで、肌にはしっとりとしたシルクだけが触れるようになります。3種の素材を一本にまとめた糸は、細くても切れにくく、しなやかによく伸びます。
組成表示にはポリエステルとポリウレタンも並びますが、これは伸縮性と強度を担う芯の部分です。糸の内側に隠れているため、肌に触れる面はシルクしかありません。化学繊維が直接肌にあたらないので、敏感な肌の方にも長く選んでいただいています。
この糸は細く、張りの加減がわずかに狂うだけで切れてしまいます。糸の状態を読みながら目の細かい編み機で編み進められる工場は、国内でも数えるほどです。縫い目のない立体編みに柔軟加工を重ね、薄さとやわらかさを両立させました。
「冬だけでなく、夏も冷房で冷える」というお声から生まれた生地です。麻のなかでも湿気を吸って外へ逃がす力が最も強いラミー(苧麻)を使っているので、汗ばんでも肌に張りつかず、さらりとした肌あたりが続きます。肌に触れる内側はシルクになるよう編み立てているので、冷房のきいた場所でも冷えすぎません。
ラミーは涼やかですが、そのままでは繊維が硬く、肌にあたります。そこで、あらかじめコットンと撚り合わせた糸に仕立てています。コットンのやわらかさが麻の硬さを包み、肌あたりも編みやすさもちょうどよく整います。混ざり合うことで生まれる杢調の奥行きのある風合いも魅力です。
外側のラミーコットンが汗を吸って素早く外へ逃がし、肌に触れる内側では絹紡糸のシルクがなめらかに寄り添います。シルク&ウールはらぱんと同じ、上質な糸です。役割の違う素材を層に分けて編むことで、涼やかさとなめらかさを同時に叶えました。
ラミーは強度が高く、編み機の針を折ってしまうこともある糸です。そして天然素材のため、太さも硬さも変わります。職人は通常より何度も編み地を検品しながら設定を微調整し、糸にも機械にも無理をさせない速度で編み進めます。丁寧にじっくり編み上げることが必要なため、ロングサイズ一枚に90分ほどかかります。
ラミーシルクでも、真夏には暑く感じる。もっと軽く、それでも冷房から守ってくれる絶妙な厚みと通気性を求めて設計した生地です。ラミーとコットンの糸に、ふっくらとしたノイルシルクを重ね、はらぱんシリーズで最も粗い編み目に仕上げました。歩くたびに、編み目のあいだを風が通り抜けていきます。
さらりとしたラミーとやわらかなコットンを撚り合わせた糸に、ノイルシルクをプラス。ノイルシルクは繊維長が短く、ふっくらとした風合いが特徴です。涼しさのなかに、身に着けている安心感がきちんと残ります。
涼やかなラミー、肌にやさしいコットン、ほのかにあたたかいノイルシルク。得意なことの違う三つを合わせているので、汗ばむ時はさらりと、冷房のきいた時はやわらかく寄り添います。一日のなかで揺れる体温に、そのまま付き合ってくれる生地です。
編み目の細かさは、針の間隔を表すゲージという数字で決まります。数字が小さいほど目は粗く、風が通りやすくなります。そよ風はらぱんは、シリーズで最も粗い10ゲージ。縫い目のない立体編みなので、ゆるやかでも体を包む安心感は変わりません。
シルクは洗えない、洗うとシミになる、毛羽立って白くなる。その心配をなくしたくて生まれた生地です。表面を樹脂で固めるのではなく、繊維同士を分子レベルで結びつける加工で、とろけるような風合いを残したまま、ご家庭の洗濯機で洗える一枚に仕上げました。
一般的な加工は表面を樹脂で覆うため、シルク特有のやわらかさが失われがちです。くらしきぬ独自のウォッシャブルシルクは繊維の内部から分子レベルで結びつけているので、とろけるような手ざわりがそのまま残ります。洗濯を繰り返しても毛羽立ちにくく、風合いが長く続きます。
当店オリジナルのシルクリブ生地は洗っても色落ちしにくいため、これまで難しかった濃色のシルク生地も実現できました。洗濯できるシルク自体が数少ないうえ、漆黒の生地はさらにめずらしい存在です。シルク100%の贅沢な肌ざわりを、特別な日のためではなく毎日のインナーとして着ていただけます。
シルクの糸そのものには、ほとんど伸縮性がありません。それでも、縦に凹凸をつくるリブ編みが伸び幅をたくわえてくれるので、体の動きにしなやかについてきます。凹凸のぶん肌に触れる面積が減るため、汗をかいても張りつきにくいのも魅力です。
くらしきぬのノイルシルクは、あえて「最高級」を目指していない素材です。シルクの糸をつくる工程では、どうしてもこぼれ落ちてしまう短い繊維が出ます。それを集めて紡ぎ直したものが、ノイルシルクです。空気をたくさん含むのでふんわりとやわらかく、保温性も、湿気を逃がす力も備えています。表面にはポツポツとした節があり、ざらつきもすべりすぎもない、ちょうど肌になじむ表情になります。飾らないけれど、毎日気持ちよく過ごせる。シルクをいちばん身近にしてくれる生地です。
1つの繭から生まれる糸は、繊維の長さによって呼び名も、向かう先も変わります。
蚕の恵みを、あますことなく使いきるために。
繭から最初に取り出す、長くて美しい繊維です。上品なツヤとつるりとした肌ざわりが特徴で、高級な和服やフォーマルウェアに使われます。
生糸を引いたあとに残る、質のよい繊維を集めて紡いだ糸です。美しい光沢となめらかさを保ちながらふんわりとした柔らかさもあり、上質なインナーに向いています。
絹紡糸を紡ぐ過程でこぼれ落ちる、いちばん短い繊維を紡ぎ直した糸です。ふんわりとあたたかく素朴な風合いで、靴下や肌着、カジュアルなアウターまで幅広く使われます。
数十年のキャリアをもつ、熟練のニッター(編み立て職人)とともに、くらしきぬの素材は生まれています。
よい製品は、よい素材から。世界中から糸を目利きして選び、その力を最大限に引き出せる日本の工場の技術で仕立てています。
絹、綿、麻、ウール。日本の四季それぞれの気候に合う天然素材を選び、季節ごとにちょうどよい生地をご用意しています。
商社を通さず工場と直接やりとりしています。糸の段階から相談できるので、よりよい製品づくりをするための細かな要望もそのまま反映できます。
工場ごとに得意な技術が違うため、生地に合わせて頼れる先を選び、長いお付き合いのなかで一緒に改良を重ねています。
数十年のキャリアをもつ、熟練のニッター(編み立て職人)とともに、くらしきぬの素材は生まれています。
くらしきぬのシルク100%リブの生地を編んでいるのは、奈良県葛城市のアラキニットさん。ほかのニッターではされないような、細部にまで工夫をして編んでいます。編み機の針を一本ずつ手で抜く準備だけで、5、6時間。糸は天井から吊るし、ピンと張らずにゆったりと送り出すことで風合いをゆるめ、編み機の釜は熱の抜けが早い銅を選ぶことで、生地が硬くならないようにしています。「どれもやらんでも編めるんです。でも、やったらちょっと違う。その“ちょっと”をやるかどうかやと思う」と荒木さんは笑います。「くらしきぬのお客様は違いがわかるから。着るほどに風合いがようなっていく。それがわかる人がおると思うから、やってるんです」